レビュー一覧

1

  • 5
    サイクリングシュート
    購入者 さん
    一撃必殺。



    何と心地よい響きだろうか。ワンターンキル、あるいはワンショットキルとも呼ばれるいわゆるコンボデッキは、これまでのマジックの歴史の中でいくつも生まれてきた。

    現在のスタンダードになぞらえれば、サヒーリ・ライと守護フェリダーの2枚がその代名詞となっているのは皆さんもご存知のことだろう。







    本来、コンボデッキというものは決まればほぼ勝利が確定する代わりに、そこに至るまでの道のりは険しいものでなくてはならない。いとも簡単に決められては、ゲームとして成り立たなくなってしまうからだ。



    そういう意味では上で述べたサヒーリコンボは比較的決めやすい部類に入るだろう。何せコンボに必要なカードはたったの2枚のみで、相手がそれに対応できなければそれだけで勝利が確定するからだ。

    もっとも、相手が何も出来なければというのは全てのコンボに通じることであり、コンボを仕掛ける側はそれを祈って仕掛けるタイミングを窺うものだ。



    ここで仕掛けて大丈夫なのか。もし失敗した場合のリカバリーは可能なのか。相手は除去や打消しをもっているのだろうか。

    その不安は常に付きまとい、考え出したらそれこそキリがないというもの。しかしどこかしらで前に進まなくてはいけないタイミングというのも確かにある。



    そのスリルを。快感を。新しいカードを使って味わいたい。そんなプレイヤーは少なからずいるはずだ。
    たとえそれが、どれだけ弱いクソみたいなデッキだとしても。新環境では全てが許される(許されるとは言っていない)。

    新しい環境の1発目、コンボデッキで相手をあっと言わせて見たくはないか?



    さぁ、見てくれ。この時間と労力の無駄遣いの結晶を。





    S.S.C(Shadow-Storm-Cycling)







    4影嵐の侍臣/Shadowstorm Vizier
    4秘法の管理者/Curator of Mysteries
    4投げ飛ばし/Fling
    4葬送の影/Shadow of the Grave
    4検閲/Censor
    4焼けつく双陽/Sweltering Suns
    4ジェイスの誓い/Oath of Jace
    4ヒエログリフの輝き/Hieroglyphic Illumination
    4新たな視点/New Perspectives
    4尖塔断の運河/Spirebluff Canal
    4異臭の池/Fetid Pools
    4泥濘の峡谷/Canyon Slough
    4さまよう噴気孔/Wandering Fumarole
    5山/Mountain
    2島/Island
    1沼/Swamp






















    とんでもないものが出来ちゃった。







    そんな読者諸君の声が聞こえてくるようだ。やめてくれ。1番辛いのはこの記事を書いている私自身なのだ。そんな死体に鞭打つような真似はしちゃあいけない。

    とはいえ、せっかくそこそこの時間をかけて書き上げた記事なので取り合えず最後まで書き留めておきたい。もしもこの記事が中途半端な段階でアップロードされたなら、恐らくその時点で私はこの世にはいないだろう。察していただきたい。







    それではまずざっくりとこのデッキが何をしたいのかを説明していこうと思う。



    (1):何とかして6ターン目に《新たな視点/New Perspectives》を設置する。設置できなかったり、それより早いターンに撲殺されていた場合は大体死んでいる、もしくは間もなく死ぬ。







    (2):7ターン目がやってくることを祈る。やってこない場合既に死んでいる。



    (3):《影嵐の侍臣/Shadowstorm Vizier》を戦場に出す。打ち消されたら死ぬ。



    (4):手札が7枚以上の状態で、《新たな視点/New Perspectives》による0マナサイクリングを連打する。《ジェイスの誓い》も併用してとにかくデッキを掘り進め、どうにかして《葬送の影/Shadow of the Grave》にたどり着く。
    手札が6枚以下の場合コンボスタートできずに死ぬ。コンボスタートしても《葬送の影/Shadow of the Grave》にたどり着けなかった場合自分が葬送されてやはり死ぬ。







    (5):0マナサイクリングで捨てたカードを《葬送の影/Shadow of the Grave》で全て回収し、またサイクリングしてというループに入る。この過程で《影嵐の侍臣/Shadowstorm Vizier》のパワーを相手のライフ以上まで育て上げ、《投げ飛ばし/Fling》で相手の顔面にシュートして勝利する。出来なかった場合どう足掻いてもやっぱり死ぬ。









    以上で説明を終える。説明を終えたので私も死ぬ。







    とまぁ冗談はさておき、コンボスタートまでがまず地獄のようなデッキである。一応最低限の妨害手段や全体除去こそあるものの、その程度で既存のデッキの攻撃から身を守れるかどうかは甚だ疑問である。



    しかし、一度コンボが始まってしまえば大体の場合はこちらがインスタントタイミングで動けるので、《影嵐の侍臣/Shadowstorm Vizier》に除去が飛んできた場合はそれに対応してサイクリングや《葬送の影/Shadow of the Grave》を繰り返すことで《投げ飛ばし/Fling》までたどり着けることもある。いや、ない。



    では次に個々のカードの採用理由と役割などを。



    ・《影嵐の侍臣/Shadowstorm Vizier》、《投げ飛ばし/Fling》

    この2枚で相手を倒す。揃わなかったら死ぬ。



    ・《秘法の管理者/Curator of Mysteries》

    サイクリングがついており、スペックも標準なので中盤の壁&相手の除去の的として採用。あまりデッキの動きに関係なく、いてもいなくても死ぬときは死ぬ。



    ・《葬送の影/Shadow of the Grave》

    デッキの潤滑油。サイクリングだけでなく《ジェイスの誓い/Oath of Jace》で捨てたカードも回収できる。このカードを連鎖できればぐっと勝利に近づく。途絶えたときは死ぬ。



    ・《検閲/Censor》、《焼けつく双陽/Sweltering Suns》、《ジェイスの誓い/Oath of Jace》、《ヒエログリフの輝き/Hieroglyphic Illumination》

    各種サイクリング+軽量な妨害手段やドロー加速。序盤に引きすぎると《影嵐の侍臣/Shadowstorm Vizier》をパンプしきれずに死ぬ上に、引けないとデッキが回転しなくてやっぱり死ぬ。



    ・《新たな視点/New Perspectives》

    デッキの核。これがないと始まらない。手札が6枚以下の場合だと何も出来ずに死ぬ。そもそもにおいてこんな視点を見つけてしまったせいで私の頭が死ぬ。







    しかし諦めないでいただきたい。このデッキ、《新たな視点/New Perspectives》に頼り切っている部分はあるものの、序盤の動きだけではまずどんなデッキであるかは悟られにくい。

    わからん殺しというものを、皆さんも1度は経験したことがあるはずだ。正しい対処が出来ないデッキというのは、使ったその時点でアドバンテージにもなる。



    このデッキも恐らく、似たようなコンセプトの末に似通った形に落ち着いたプレイヤーの方もいるかもしれない。

    他ならぬ私自身も少なからずネタに走ってこの構築に至ったわけだが、それでもコンボデッキとして振舞うために必要最低限の守りのカードは詰め込んであるので、アグロデッキ相手にはしっかりと除去を当てて耐えしのぎ、ミッドレンジやコントロール相手にはゆっくりと手札を揃えるように立ち回ろう。

    パッと見て、やはり展開の速いアグロデッキには厳しい戦いを強いられることになりそうなので、サイドボードには追加の軽量除去などを多めに搭載することをオススメする。



    また、仮に1ゲーム目を何も出来ないままに負けてしまったとしても、ほぼノンクリーチャーデッキに等しいこのデッキに対して対戦相手はサイドボード後に除去を減らしてくるはずだ。そうすれば《影嵐の侍臣/Shadowstorm Vizier》は生き残りやすくなるし、いわゆるわからん殺しの可能性は継続される。



    こちらのデッキの正体がわからない以上、相手は正しいサイドボーディングも難しいだろう。それに引き換え、こちらは苦手な部分を克服するだけのサイドボーディングを行えばいい。が、サイドボーディングの結果元のデッキコンセプトが瓦解してしまうこともある。



    そんなときのために、いわゆるサイドボード後にデッキが全く別物に変化する小技も面白いだろう。例えば、サイドボードに《熱病の幻視/Fevered Visions》や《電招の塔/Dynavolt Tower》などを用意しておいて、サイド後にはそれらを利用したコントロールデッキにシフトすることも難しくはない。

    もっともその場合はメインボードにも手直しを加える必要が出てくるが、その辺は要調整といったところだろう。



    また、明確に敗北が迫ったとき、それがまだマッチの決着に影響のないゲームである場合はヘタに余計なカードを相手に見せず、情報を与えないまま投了するのも1つの対応だ。相手に正確なプレイをできなくさせるのは立派な戦術の1つなのだから。



    ともあれ、この記事を読んでくれた方々の中で興味を持った方がいたら、ぜひ試してみて欲しい。後出しにはなってしまうが、アモンケット発売後に私も責任を持ってこのデッキ(多少手を加えたバージョンになるかもしれないが)を作成し、イベントに参加してみるつもりだ。責任は取る。絶対に。


    とは言ったものの、新カードが多用されているとはいえ比較的安価なカードだけで組むことができるので、カジュアルに遊んでみる分には面白いかもしれない。FNMであれば敗北しても肉体への負担は少ないだろうし、5回やれば1回くらいは何かの間違いで気持ちよくなれるかもしれない。皆さんの健闘に期待する。



    それでは今回はこの辺で。

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