2017/06/06

 

連載インタビュー「100人×100色=マジック」 第2回: 佐々木 修(岩手、レベル2ジャッジ)

 

by 伊藤 大暉

 

 

 

 

日本各地に存在するマジック:ザ・ギャザリングのコミュニティ。

 

本コラムでは、競技プレイヤーとしてマジックに臨む方からジャッジとして屋台骨を支えてくれる方々まで、ご自身のマジック観やご当地マジック事情について毎回一名のゲストと対談を行いインタビュー記事を連載していきます。

 

第2回は、岩手在住でレベル2ジャッジとして活動していらっしゃる"佐々木 修"さんにお話を伺いました。

会場は岩手のMtGショップである”駄菓子のたまや”様の提供でお送り致します。

 

第2回インタビュアーは当店スタッフ 小山内、増田の二名です。

 

 

 

 

佐々木 修(ササキ オサム)

 

 

 

 
岩手で教職の傍ら、マジックをプレイヤーとジャッジの両方で活動。

2014年にレベル2ジャッジに昇格後、岩手や仙台のPPTQでヘッドジャッジを務めるなど、東北のマジックに大きく貢献している。

 

 

 

小山内:今回はお忙しい中お時間を頂き、ありがとうございます。早速ですが、佐々木さんとマジックの出会いについて教えてください。

 

佐々木:高校生の頃からTRPGにはまっておりまして、そのTRPGの雑誌(1996年)でマジックが紹介されているのを見たのが最初です。

 

 

 

 

 

 

増田:こんな雑誌があったのですね。

 

佐々木:当時はTRPGプレイヤーの比率が高かったと思います。当時、『MTG』の紹介にTRPGに縁が深い朱鷺田さん(※1)や金澤さん(※2)が関わっていましたね。それに触発されてマジックを始めてみて、まずはTRPGの友人に紹介して一緒にプレイしていました。

 

 

※1:朱鷺田祐介氏。

※2:金澤尚子氏。

 

 

 

 

 

 

小山内:TRPGは学校の中で流行っていた感じですか?

 

佐々木:私が広めました(笑)マジックも一緒に広がっていき、授業の休み時間などにプレイしてました。

 

小山内:なるほど。当時はどうやってカードを集めていましたか?

 

佐々木:その頃はまだアンコモンやレアといった認識がなかったので、主に色でカードのトレードをしていましたね。赤いデッキを使う人はそれ以外の色を使う人から赤いカードをもらうみたいな感じですかね。

 

小山内:なるほど。マジックはそのようなスタートで今までずっと続けてこられたのでしょうか。

 

佐々木:いえ、実は長期間離れた時期があるんですよ。進学した大学にTCGサークルがありまして、そこに行って対戦をしてみたんですけど、自分はまだレアリティ区別のないカジュアルデッキだったのに対して相手はガチデッキで絶望しました(笑) 一応そこからカードを集めるようにはなったんですけど、6版が出て今使ってるカードがローテ落ちすることになった時を境にカードを集めることからは一時離れました。

 

小山内:ローテーションは初めての人にとっては衝撃的なイベントですものね。大会等にもあまり参加しなくなりましたか?

 

佐々木:学生時代の大会参加経験はありませんでした。2010年頃ですかね、大学時代からの友人にEDHを紹介されて、昔のカードでも遊べるということで復帰しました。復帰したての頃はEDHが中心でしたが、新しいカードも欲しくなって、ネットの普及もありWebで情報を仕入れていくうちにのめりこんでいきました。リミテッドの存在もこの時初めて知ったくらいで、試しに遊んでみたらやっぱり楽しかったですね。

 

増田:構築フォーマットは遊ばれましたか?

 

佐々木:やはりカードが集まるとデッキを作ってみたくなるもので(笑)。初めて出たスタンダードの大会ではターボフォグを組んでました。そのころはアラーラ-ゼンディカー期の頃でしたかね。戦績は2敗1分けと辛酸を舐めさせられましたが、1分けの試合は印象的でした。当時全盛期の青白コントロール相手に散々グダッて最終的にエムラクールをプレイできたんですよね(笑)

 

 

 

 

 

 

小山内:今のようなジャッジ活動を始めたのはいつ頃からですか?

 

佐々木:レベル1ジャッジの資格を取ったのは2011年の秋です。「たまや」さんの店舗レベルが上がってThe Finals・Limitsの店舗予選が出来るようになったんですけど、開催にはレベルジャッジが必要で。自分は当時ルールアドバイザーの試験は合格していて常連の中でもルールには詳しい方だったので、自分が引き受けてみようと考え始めました。
The Finals・Limitsのスペシャル地区予選があった際に一関のタカハシさんというレベルジャッジの方がヘッドジャッジを勤められていたので、そこで試験方法についてご教授いただき、その後鈴木健二さん(※)に遠隔試験をして頂いて無事合格したという流れでした。

 

 

※3:元レベル3ジャッジ。

 


佐々木:ジャッジになるとプレイヤー活動が縮小すると思われたりするんですけど、自分の場合は逆にジャッジになってからの方がよりプレイヤーとしての活動が増えるようになりましたね。
県外にも足を運ぶようになり、八戸や仙台の大会によく出てました。仙台の草の根大会である五城楼杯は東北でも一番人が集まっていたので作ったばかりのレガシーを持っていくなどお世話になってました。

 

小山内:レガシーも組まれていたのですね。何のデッキですか?

 

佐々木:エンチャントレスです。高校時代に緑のデッキを使っていた時の名残で《新緑の女魔術師》や《狂暴ウォンバット》などを持っていたので。今でもエンチャントを唱えてカードを引くのが好きなくらいです。モダンでも呪禁オーラを作りました(笑)

 

 

 


小山内:レベル2になるまでの下積みを教えてください。

 

佐々木:初めてジャッジ参加したイベントはレベル1を取った翌年のグランプリ横浜2012です。

 

増田:印象に残ったことはありますか?

 

佐々木:歩きやすい靴を履こう、ですかね。とにかくフロアを歩き回るので足が疲れました。同時にグランプリのジャッジがどれだけ苦労しているのかも分かりましたね。プレイヤーの皆さんにはどうかジャッジを肉体的にいじめないでいただければと思います(笑)

レベル2に昇格したのは2014年の冬ですね。地域コーディネーターでレベル3の牧野さんに試験と面接を担当していただき、苦労の末合格しました。レベル1試験に比べるとやはりレベル2への昇格には必要な知識や経験が多く、ハードルは高いですね。


小山内:将来の希望としてレベル3は考えていますか?

 

佐々木:レベル3に必要な英語力が足りないので厳しいですね(笑)
あ、ちなみに英語についてですが、グランプリで海外ジャッジと何度も交流しているんですけど、私たちが片言の日本語でも聞く姿勢を持つのと同様に海外の方も片言の英語は聞いてくれます。なので、そういった方々と対戦するときにも最低限の挨拶があると対戦中のコミュニケーションがはかどると思いますね。

レベル3を目指すこととは別に、東北の各県にレベル2ジャッジを置くという活動には助力していきたいと思っています。ポーラスターオープン(※4)のようなWPN認定競技イベントが増えることにもつながりますので。

 

※4:定期開催されている『駄菓子のたまや』主催のプレミアムトーナメント。(HP

 

 

 

 

 

 

小山内:マジックで出来た交流などにはどんなものがありますか?

 

佐々木:ここ「たまや」さんには毎週お世話になっています。またレベル1ジャッジのイシイユウキさんには毎度スタンダードのお世話になっていますね。また、母校のTCGサークルにはいまだに顔を出してはマジックの普及をしています。毎年数名は新しいDCIナンバーを発行していますよ!

 

小山内:これからの東北のマジックはどう考えていらっしゃいますか?

 

佐々木:東北のマジックは盛り上がっていると思います。アドバンス店舗が増えたことでPPTQも年々開催数が増加しています。熊谷陸(※4)さんがグランプリで優勝したことで競技へ触発されたプレイヤーも多いんじゃないでしょうか。

 

 

※4:グランプリ東京16優勝・グランプリ北京17ベスト8

 

 

小山内:マジックを通じて得たものは何があると思いますか?

 

佐々木:やはり知り合いは増えましたね。業種も地域も関係なく、東北中、日本中に知り合いが出来ました。マジックを触り始めたころ『MTGプレイヤーに100の質問』というのに答えたとき、「マジックのない地域に住むならどうするか」という質問には「諦める気がする」と答えたんですけど、去年か一昨年に答えたときは「そこに広める!」と書き換えました。

 

増田:マジックはコミュニケーションツールでもありますからね。

 

 

 

 

 

 

小山内:岩手で新しくマジックを始める人に対して何か一言お願いします。

 

佐々木:マジックはTCGの原点として20年以上続いており、いまだに新鮮さを提供してくれています。
ジャンルを問わず、TCGをやったことのある人には一度触ってほしいですね。マジックプレイヤーはみな親切で紳士的な方々ですので、新しい方は常に歓迎されますよ。それに、友達を是非お店に連れてきてほしいですね!友達以外の方と対戦するというのも面白いものですよ。

 


小山内:佐々木さんご自身の今後のマジックはどのような展望がありますか?

 

佐々木:私が大きくマジックに貢献できることとしてはやはりジャッジの育成があると思います。レベル1をレベル2へ引き上げ、東北のマジックを活性化していきたいです。プレイヤーとしては……もう一度プロツアーに参加してみたいですね。過去に一度だけ《ギルド門侵犯》のプロツアーに参加したことがあるんですが、あの雰囲気をもう一度味わってみたいです。PPTQを抜けた方にも是非RPTQを抜けてプロツアーのあの雰囲気を感じてほしいものですね。

 


小山内:本日はご協力ありがとうございました。